EverQuest II: The Bloodline Chronicles 第2話「闇への入り口」
投稿日時: 2005-3-15 4:14

EverQuest II: The Bloodline Chronicles
第2話「闇への入り口」
彼らは水辺に沿って、土手に生えた背の高い草をすり抜け、すばやく動いている。川の急流は前進を拒んだが、彼らの足音はまったくしない。一人は猫のように優雅に、もう一人は経験豊かなハンターの素早さで動く。
彼らは待ち伏せを予想し、開けた場所に出るごとに互いに合図を送る。だがそのつど、そこには川の流れの音しかなかった。
「変だな」、ついにレンジャーは言う。「以前、何度もこの川を偵察したことがあるが、ゴブリンが全域に出没していたはずだ。」
「露営地で言っていたとおりのようだな、バーデン」と、ケラは答えた。「迷子の数匹を除き、ゴブリンは消えてしまったようだ。恐らく捕まえている1匹が、やつらの消えた場所を明かしてくれるだろう。」
「ゴブリンに尋問しようとしたことがあるのか、マーラー?」、人間はたずねる。「仮にやつらの言葉がわかったとしても、あいつらの片言からは何も役立つものを得られないだろうよ」
「ふむ、まったくその通りだな」と彼は答えた。「先へ急ごう」
曲がりくねった川を、ふたたび彼らは前進した。しばらくして、行く手に急勾配の坂道が見える場所にでる。
その丘の頂上は、"ソウル・イーターの滝(The Soul Eater Falls)"から流れ出る、小さな湖となっていた。森の暗がりの中でさえ、この場所には確かな静寂と美しさがあった。二人が湖のほとりに沿って、調査を始めようとしたとき、立ち止まった。
「追跡(Tracking)する・・・」とレンジャーが言った。「滝のほうへ」
彼らは藪をすり抜け、注意深くかがみながら、滝の近くへ歩く。ケラが立ち止まると、同じようにレンジャーも立ち止まる合図を送る。
「この臭いは嗅いだことがある」と彼は言い、剣を抜いた。
「まったく、その通りね」、冷ややかな声が答える。
レンジャーは辺りを見回しながら、矢をあてがい、弓をひく。彼は一人のダークエルフを指さした。「タイールめ、理由がなければ射る!」
「あら、そうねぇ」、彼女は言った。そのエルフの目は、ぎらぎらと彼をにらみつける。「裏切りの証拠がここにあるのだから、あなたが私を置き去りにするとは思えないわ」
「裏切り?」、ケラが唸った。「魔女よ、今度はどんな嘘をついているのだ?」
「なんてマンネリなのかしら」、彼女は答えた。「あなた方は、狂った女王のいいつけを守って、フリーポートの素晴らしい市民たちに下劣な病気の毒を盛る・・・ような気高い化けの皮を着ているということよ。でもね、たった今、この疫病の病原を見つけたわ。市民の治療法も見つかるでしょう」
「タイール、そんな嘘で俺たちを本気でだませると思ってるのか?」、レンジャーがたずねた。「ネクテュロスの森に汚れた病気を放ったのが、おまえの君主様ってことは明らかなんだよ、それにいま真実を見つけた。おまえは俺たちに非難されるのを免れようとしているな。じつに巧妙に、Teir'Dal」
「嘘つき!」、彼女はヒステリックに叫び、その手は剣先のある杖をぎゅっと握りしめている。「罪のない人々を殺害する陰謀を企てたのは、ここにいるあなた方よ。供給品や街の護衛をめちゃめちゃにするために、私たちの都市へケイノスの諜報員を送らなかった?弁解は無用よ」
「あなた方も我々に同じことをやっている、いやもっとひどい」、ケラが背後で唸った。「これは君主の売春婦がついた嘘にすぎないのだ!」
「家畜どもめ、燃えなさい!」、指先に青い炎を集めながら、彼女は答えた。「化けの皮を剥いだマットで足を拭かせていただくわ!」
「これで十分だ!」、レンジャーは大声で叫ぶ。「疫病の病源を見つけるため、アントニア・ベイル女王の命によって、俺たちはここへ遣わされた。俺たちが毒を盛っているわけじゃない」
「なぜそんなこと信じろというの?」、彼女はたずねる。「私が信じることのできる人間は、この世に一人だけ。あなたや、あなた方の女王様でないことは確かね」
「タイール・ヌ=ベレックス、いまはおまえを信じることはできない。だがもし、この疫病がケイノスと同じく、フリーポートにも広まっているのだとしたら、・・・恐らく俺たちには共通の敵がいる。それにお互い戦い合っても、人々を救うことにはならないぞ」
「何のプロポーズかしら?」、彼女は目を細め、たずねた。
「ふむ、私も知りたいな」とケラは言った。「もし君が、私もこの下劣女を助けるだろうと考えているのだとしたら・・・」
「落ち着け、マーラー」、レンジャーは言った。「俺だって、おまえ以上にこんなことはしたくない。だが、この件には同じ目標が絡んでいる気がしてならない。おい、タイール、一時休戦に同意するか?」
彼女は疑い深い目で彼らを見つめた。「いいでしょう。休戦を受け入れるわ。この疫病の背後にあなた方がいる証拠を見つけるまでは、ね」
「俺も同意する」、レンジャーは答えた。「だが教えてくれ、この契約は俺たちの背後に隠れている、おまえさんの友人にもあてはまるのか?」
Teir'Dalは顔をしかめた。「姿を現していいわよ、コロダー」。彼女は呼んだ。「ちょうど休戦を誓ったところなの」
派手に重装を着込んだバーバリアンが木陰から姿を現し、彼らに歩み寄った。「おおせどおりに。ご主人様」
マーラーは彼をにらんだ。「貴公は、そのような重装で我らに忍び寄ろうとしていたのか?」
「ケラよ、貴様らを倒すために忍び寄りなど必要とせん」、コロダーは脅す。
「気取っていても仕方ない」、レンジャーはたしなめた。「いくぞ」
「どこに?」、タイールはたずねる。「T'Rathの役立たずが言うには、私たちの捜しものはここにあると言うの。でも、病源と考えられるような証拠はどこにも無かったわ」
「それは、君が"その場所"を見ていないからさ」、レンジャーは言った。「俺たちが捜しているものは、滝の裏にある」
4人は水流を通り抜け、背後に大洞窟のある滝のしぶきへと入っていった。
「前方にドアがある」、バーデンは注意を促した。
彼らは前進すると、レンジャーが鍵をチェックする。「最近、開かれた形跡があるな」、と彼は言った。肩掛けカバンから、いくつかのピッキング道具を取り出すと、ほどなくドアは開かれた。
「後ろに下がってろ」、彼は3人に話した。
「あなたからの指図は受けないわ!」、タイールはヒステリックに叫ぶ。
レンジャーはため息をつき、「指図なんてしてないだろ?あ、そうか、"どうぞ後ろについてきてください"」
彼らは、膝丈の水面を注意深く進み、洞窟の壁に沿って歩く。この場所は、長く埋まったまま封印されていたせいか、腐ったような臭いがした。
バーデンは、他の者よりやや前方にいた。角を曲がると、彼らのほうへ後戻りし始める。「おいおい・・・、どうやら質問に答えられそうだ」と彼はいう。
「何の質問よ?」、Teir'Dalはたずねる。
「ゴブリンがどこに消えたか、ってことさ」
目の前の影の外側には、数え切れないゴブリンと、洞窟の暗がりでギラリと光る球根のような目があった。
「出来たてホヤホヤ同盟の最初のテストのようね」、タイールは言う。彼女は呪文を唱え始める。
「そのようだな」、マーラーは答えた。「おまえさんの魔法とやらが仕事中に使えることを祈ってるよ」
「ふふん、おしゃべりはそこまでだ!」、コロダーは抜け目なく、彼の剣を引き抜く。「攻撃!」
彼が前方へ突撃すると、レンジャーはゴブリンの群れへ炎の矢を放ち、タイールは群れの上空からエナジーボルトの雨を降らせる。ケラも剣を抜き、ゴブリンの群集へ猛攻していった。
大洞窟の奥深く、何かが動き出す。「来たな」、"それ"は囁いた。「ついに来たか」
(第3話につづく)(第1話はこちら)
記事: EverQuest II: The Bloodline Chronicles - CHAPTER II: THE MOUTH OF DARKNESS
登場人物
- バーデン(男・レンジャー・人間)
- マーラー(男・ウォーリア・ケラ)
- タイール(女・ソーサラー・ダークエルフ)
- コロダー(男・バーサーカー・バーバリアン)
※Teir'Dal・・・ノーラスのエルフ語で「地底のエルフ」の意味。ダークエルフのこと。
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勝手にまとめ
- Nektulos Forestの滝の裏から拡張パックが始まるところの背景ストーリー。
タイール「ちっ、姿を現してもいいわよ、コロダー」
コロダー「そのコロダーと思って、準備してたとこ。ガハハハ」